Amazonにおける本の紹介
世界最先端のテック企業は、ここまで進化していた!
日本人がぜんぜん知らないビッグチャンスが盛りだくさん!ビジネスの常識を破壊した、「10の決定的変革」を徹底解説!
1800もの世界最先端企業のビジネスの現場から導かれた世界を変える会社の「絶対条件」【最新テックビジネスの例】
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・アマゾンを超える「世界最大のEC」が切り開く新たな市場
・セグウェイがさらなる進化! 移動の概念を変える「次世代スマートモビリティ」
・ズブの素人が一夜にして「トップ不動産セールスマン」へと変貌する型破りの動画プラットフォーム
・「小さな町中華」が莫大な利益を生み出す理由
感想
この本は、中国のテック企業が急速に進化し、新しいビジネスモデルを生み出している事例が紹介されている本です。著者は老舗の人形店の経営者ですが、中国の企業とのネットワークを持っており、「一般社団法人深圳市越境 EC協会日本支部代表理事」という肩書きがあります。
タイトルや本文では「世界のテック企業」と表記されているのですが、事例はほとんど中国のテック企業の話になっていて、ちょっとタイトル詐欺かな?と思いました。また、「中国のテック企業はこんなに進んでいてすごい!」という感じで進んでいくのですが、とくに信用スコアのところなど「技術的に進んでいるかもしれないが、これを手放しで礼賛するのは違うのではないか?」と思うこともありました。
とはいえ、日本にいるとあまり具体的な話を聞かない中国のテクノロジー産業の現在地についてよくまとまっていて、とても面白く読みました。
全体的に、個人情報をどんどん吸い上げて、そのビッグデータを使って個人に最適化する、というビジネスモデルになっています。効率的にデータを使えるので技術も先鋭化できるわけですが、ここまで個人情報保護が甘いのは、個人的にはちょっと嫌かな、と思いました。上でもちょっと書いたのですが、とくに「信用スコア」というのがあって、どんな生活や行動をしているか、どんな人と関わっているか、などでその人の「信頼度」が計算されていて、それによって生活が便利になったり不便になったりする、というのはやりすぎだと思いますね〜そしてそんな状態を中国の人民は「便利だから問題ない」と考える人が多いようで、「自分から望んで管理されている」なんてディストピアSF小説みたいですね。もちろん、データ収集を拒否することもできるのですが、そうするとかなり不便・不利になってしまうのなら、やらざるを得ないわけで、こういうシステムを国家として「あり」としていることがすごいなと思ってしまいます。
逆に、ヨーロッパではかなり個人情報保護の気風が強くて、AIも規制しようという話になっていますね。データ利用の規制と推進は、個人の権利と利便性の間でバランスをとっていく必要があるのだろうなと思います。
また、Tiktokとはじめとした「短時間でインパクトのあるメッセージ動画で購買意欲を掻き立てる」というビジネスモデルも、大量生産大量消費でエコじゃないなあと思いますし、自分で買うというよりは買わされているという感じなわけで、うーんそういうの好きじゃないな、と思ってしまいました。
ちょっとネガティブなことを書きましたが、中国のテック企業はかなり最新技術を活用していて、とても便利になっているというのは事実だと思います。とくに気になったサービスとしては、「サイケイ」というサービスが個人商店のDXを進めているというところと、無人コンビニを先鋭化させた「自動棚」というサービスです。
以下、サイケイに関する本文を少し引用します。
SNS露出、テイクアウトメニューの開発、調達管理のデジタル化などを提供し、決済やプロモーション、調達管理データの集積を通じてビッグデータ化を実現します。これにより、メニュー開発や仕入れ、マーケティングの最適化が可能になります。サイケイは200万店舗を超える飲食店に導入され、業務効率化を促進しています。
これによって個人商店が集まって巨大資本に対抗できる力を持ち始めている、ということが書かれていて、こういう戦い方はいいなあと思いました。
自動棚は、マンションや会社に設置されていて、在庫の管理や補充はその建物の管理人が行うことによって効率化を実現しているそうです。管理や決済はすべてデジタル管理されていて、発注も自動的に行われるようで、こういうのはすごく便利ですよね。
という感じで、「データの利活用」がデジタル時代には必須で、マーケティングはAIで行うのが当然になっています。
翻って日本では、データの利活用はなかなか進んでいないですし、大企業は意思決定が遅くて変化に対応できていないように思います。この「意思決定の速さ」がVUCAの時代には大事なんだなというのは最近すごく感じていて、1年判断が遅れるだけでその後10年遅れをとる、というくらいの時代の変化の速さになっている気がします。生成AIが話題になっていますが、社内に導入できている会社とそうでない会社で生産性に大きな開きが出てくることは想像に難くありません。
中国の「順応の速さ」「とりあえずやってみる精神」は日本も見習わないといけないところだと思いました。
中国の事例をそのまま日本にもってきても上手くはいかないと思いますが、参考にできることはたくさんあると思いますし、刺激をもらえて面白かったです。
概要
はじめに・おわりに
現代は「VUCA」(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)と呼ばれる不確実な時代で、革新的なサービスが次々に登場し、既存のビジネスモデルを一新しています。日本の製造業を含む伝統的なビジネスは、この急速な変化に対応するのに苦労しており、新しい形の競争者によって市場が再編されています。世界のテック企業は、日本企業の想像を超える速さで進化し、新しいビジネスモデルを生み出しています。これらの企業は、ユーザー中心のアプローチ、動画コンテンツ、24時間のマッチングビジネス、オンラインとオフラインの境界の消失など、革新的な手法を採用しています。また、次世代のプライシング戦略やスイミー戦略など、新しいビジネスモデルの要素が紹介されています。半導体技術の急速な発展により、さらに多くの製品がインターネットに接続される可能性があり、時代の変革が加速することが予想されます。日本の家電産業はこの動きに遅れをとっており、ユーザーのニーズを理解し、製品開発に反映することが今後の課題です。日本のビジネス環境は伝統的な考え方に基づいているため、変化に対応するのが難しい状況にありますが、テクノロジーの進化に伴い、新しい形のパートナーシップや共通プラットフォームの活用が必要です。現状に満足せず、変化を受け入れることが重要であることが強調されています。
第1章 「便利」から「楽しい」に価値基準がシフトしている
現代のテック企業はデジタルトランスフォーメーションを進め、「楽しさ」を中心に据えたサービスを提供しています。ユーザーの楽しみを通じてロイヤリティを高め、データを収集する戦略が注目されています。ピンドゥオドゥオやレッド、北京小唱科技のような企業は、SNSとECの組み合わせや、カラオケ体験を通じて新しい消費体験を創出しています。これらの取り組みは、消費行動の変化を促し、デジタル時代の新たなビジネスモデルを形成しています。
第2章 ユーザーと企業が「共犯関係」を築いている
売り手と買い手が相互に情報を共有する「共犯関係」を築き、情報の非対称性を解消しています。アリババグループの「タオバオライブ」や、ソーヤング、ジーフーなどは、インフルエンサーを活用し、ユーザーとの信頼関係を築いています。これにより、ユーザーはより信頼できる情報を得られ、売り手は信用に基づいて商品やサービスを提供することが可能になります。
第3章 「五感を刺激する」買い物体験で購買意欲を加速させている
画像認識AIを用いた映画内商品のタグ付けや、動画コミュニケーションの重要性が高まっています。特にTikTokやクアイショウのようなショート動画プラットフォームは、動画を通じた直感的な買い物体験を提供し、新しい消費スタイルを生み出しています。若者層は短い動画や音声コンテンツを好み、企業はこれに応じたマーケティング戦略を取っています。
第4章 時間365日、需要と供給の出会いを生み出し続けている
AIを活用した24時間体制の需要と供給のマッチングが実現されています。メイトゥアンやウーラマは食のプラットフォームとして、ユーザーの消費行動を変革し、ラッキンコーヒーはAIによる個別化されたプッシュ通知を提供しています。これにより、マーケティングはAIによって主導され、顧客のニーズに即応する形で提供されます。
第5章 「信用の見える化」で共通の評価軸を立てている
中国では総合的な信用スコアリングシステムが確立され、社会秩序の維持や取引コストの削減に貢献しています。アリババグループやテンセントは、信用スコアに基づいた経済活動を促進し、新しいビジネスモデルと社会システムを展開しています。信用スコアリングは、個人のデータ提供によるベネフィットの提示が重要な要素となっています。
第6章 「オンライン」と「オフライン」の境界が取り払われている
OMO(Online Merges with Offline)の概念により、オンラインとオフラインの融合が進んでいます。アマゾンやウォルマートのような企業はオンラインとオフラインの統合によって顧客体験を向上させ、中国では自動棚や無人コンビニが普及しています。これにより、オンラインとオフラインの境界が曖昧になり、新しい顧客体験が生まれています。
第7章 定価にこだわらず利益を最大化する値付けをしている
ダイナミック・プライシングが進化し、顧客ニーズに基づいて価格を設定する手法が採用されています。AIを導入した自動化プライシングや、顧客の購買力に応じた価格設定が行われています。中国の企業では、ビッグデータを活用して顧客に合わせた価格を提案し、利益を最大化しています。
第8章 小さな課題や悩みが1箇所に集まり、大きな価値が生まれている
サイケイやアスクボットのようなプラットフォームは、小規模事業者や従業員の悩みを集約し、ビッグデータを活用して解決策を提供します。このような集約により、零細事業者でも大企業と競合できる力を持ち、新しい資本主義の可能性を示しています。
第9章 「PCレス戦略」で専門性が民主化されている
テクノロジーのフラット化により、スマートフォンやタブレットの普及が進み、専門知識が不要になっています。企業は多様な人材を確保しやすくなり、顧客体験の向上に寄与しています。ユーザーは直感的な操作でテクノロジーを活用でき、DXが当たり前の社会へと移行しています。
第10章 「ハード」ではなく「ソフト」で差別化が行われている
「ハード+ソフト&サブスク」モデルにより、ソフトウェアでの差別化が進んでいます。ナインボットやアイフライテックのような企業は、ユーザーデータを活用してパーソナライズされたサービスを提供し、新たなビジネスモデルを構築しています。これは、製品開発においてユーザーの意見が重要視される新時代のものづくりを象徴しています。
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